思惑

「ふう、予想通りの展開ですね。」

Ωや英仏連合軍の力では、遺跡の場所は特定できても入り口を見つけるのに時間がかかることはわかりきっていた。第4の力か魔術を使用しない限り、入り口を見つけるのは困難だ。1億ポンドの資金に100万人動員して10年はかかるだろう。

第4の力を所有する私は、この森に入って直ぐに入り口を見つけたが、この1週間黙っていた。

1週間。体力の少ない私にとっては長い時間だった。しかし、それはまったくの無駄ではなかった。先ほどの中佐の懇願からわかるように、遺跡探索には私の魔術教団の力が必要だということをΩは思い知ったことであろう。これで私の発言権も高まるし、ひいては今後の活動もしやすくなる。当然、報酬も上乗せができるからその資金を元に私の教団の勢力を拡大することが可能となる。

配下を養い、裏の世界でのし上がるためには大量の資金が必要だ。このことは8歳のときに師に拾われる前より痛感していたことである。

「彼らがあの力の使用に気付く前に、入り口へ導かなければなりませんね。カリンをどうするべきか。」

カリンは私の配下だが、実際は教団同士の同盟を結んでおりその地位はほぼ対等だ。今回のインド作戦にカリンを同行させたのも、目の届かないところでの裏切りを恐れたからだ。艦上魔術師であり、通信系の力に強いカリンは今後の世界で重宝される人材だ。状況しだいで確実に私を裏切るだろう。それは断言できる。同じ艦上魔術師である私は防御系の力が強く、数年は大海戦が勃発しない状況下で重宝されることはあまりない。

・・・・・

・・・

「退場していただきましょうか。」

・・・

それはあまり良い手ではない。配下とはいえ、同胞を見殺しにあったとしては私の指揮能力が疑われるだろう。長が部下を助けないことが知れ渡れば、配下の魔術士は逃げていく可能性は高い。ことは慎重に、疑われること無く行わなければならないだろう。結論を出してから30分後、中佐たちに私の魔術で入り口を見つけたことを告げた。


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