零距離戦闘とドリル

『零距離戦闘の開始前、ラムかドリルがほしいな。本気でそう思った。敵に横槍をいれられる。今の海軍では絶対に使用しない方法だが。』

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あれから15分、敵艦は挟み撃ちを恐れたのか、元々本艦が狙いだったのかはわからないが、「ダイヤモンド」「ルビー」「エメラルド」は無視し、本艦に攻撃を集中させてきた。だが、レーダーを搭載していないのか、搭乗員の訓練度が低いのかはわからないが、20cm砲の徹甲弾は「ディリジウム」に8発しか命中しなかった。魚雷は撃ってこない。どうやら搭載されていないようだった。

逃走を考えたが、後腐れがないように敵艦の戦闘能力を奪うことにした。最初は反対した副指令も最終的には同意した。彼なりの計算と打算があったのだろう。

「ディリジウム」には、秘密結社「鷲」を構成する有力組織「タイガー・ハンターズ」の陸戦部隊員50名が乗っていた。また、「第零遊撃部隊」(ここでは第零、第1~第8遊撃部隊の総称を指す。「第零遊撃部隊」は大きく分けて、実戦部と、後方勤務部に分かれる)の陸上制圧部隊の生き残りが50名ほどが乗っていた。

インドの遺跡を探索するために与えられた、いわば駒だ。そして私の作戦の切り札だった。

彼らが敵艦に乗り込み艦橋を制圧する。もしくは、機関部を破壊し敵艦の速度を低下させ、追撃をあきらめさせる。敵艦内部での作戦時間はおよそ15分。

距離1000メートルで徹甲榴弾を斉射し、敵艦の甲板にいる乗員を殺傷する。距離100メートルからは機銃で攻撃を行う。その後は速度を敵艦に合わせ、接舷し陸戦部隊を乗り込ませる。艦上戦闘の経験はどの程度がわからないが、「タイガー・ハンターズ」の実力にかけるしかない。鷲の目を持って虎をしとめるというその実力に。

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「タイガー・ハンターズ」の長「サガット」と陸上制圧部隊長「北条浪」に作戦の詳細を告げる。

「本作戦において何人ほど要員を引き裂けるか?」

しばらく考えていた後、サガットは答える。

「元々遺跡探索だったため、艦橋内などの屋内戦は30名、残りは遺跡の護衛20名。護衛の20名は甲板なら戦えるますぜ」あきらかに陸上の歴戦の勇士の体格と声を持った男が答える。

「こちらは10名ほどしか役に立ちそうにありまえん。無論艦内の案内役としてですが」

動員可能数は60名といったところだ。軍艦である巡洋艦には700名以上の乗員がいるから、10倍の敵と戦うことになる。だが、彼らは海上のプロであって、白兵戦のプロではない。そんな楽観的な気分で作戦を開始した。

4000、3000、2000メートル。敵艦の命中率は信じられないほど低い。1000メートルで徹甲榴弾を発射し、敵艦甲板上の人間を殺傷する。さらに距離を縮めて100メートルの距離で機銃斉射する。その後は優速を生かし、敵の側面に本艦をくっつける。後は、陸上部隊の活躍だ。当然私も参加する。「ディリジウム」に残っていたのでは、彼らを見殺しにするという言われなき誤解を招きそうだし、士気も上がらないだろう。ミティは本艦に残ってもらって副指令の監視に当たってもらうことにした。

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「作戦開始は1915。私が率いる第2陣20名は艦橋の制圧に。サガット軍曹が率いる第1陣20名は機関室へ向かえ。残りは砲などにいる敵の抹殺だ。甲板では銃の使用を認めるが、艦内では跳躍弾の可能性があるからできる限り使用しないように。手榴弾、煙幕も禁止だ。

「やれやれ、厄介な制約ですな。」サガットはそうぼやく。

「前世紀の戦いですな」北条浪はすこしあざ笑ったような口調でそういう。

敵艦に近づく、それを見ても敵艦は逃げようとしなかった。???あまり経験のないものが指揮をとっているのだろうか?それはそれで好都合だ。

2つの艦は1つになり、我々は制圧に向かった。当初は簡単だと楽観していたが、艦橋で出会った人物が誰だがわかったときにそれは絶望に近づいた。


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