ロストテクノロジー

「この戦艦は?」

その問いに、科学者らしき男が答える。 「我々は封印艦と呼んでおる。いつかこの封印を破りしものが現れたとき、この艦は我々の脅威となるだろう。摩天楼などこの艦からすれば駆逐艦以下の存在だ。先の大海戦の間に作成した光学兵器などは今世紀には不可能な技術だ。この本にある技術が無ければ、第零遊撃部隊は列強の光学兵器の前に敗れ去っていただろう。我々が作成した光学兵器などは、この本から得た知識を元に作成したデッドコピーにすぎんからな。」

今度は長が答える。 「この古代の知識を読解する力のある魔術師、知識を解析し理論体系化する力ある科学者、理論を実現する力ある技術者、そしてこの力を操作する力ある第零遊撃部隊。これらの組織の総力を結集して我々は世界の破滅を救おうと考えた。だが、あの男が裏切ったため、彼を止めるために我々はイギリス、ドイツ、アメリカ、日本の力を借りねばならなかった。代償は非常に高くついたがな。非常にな・・・」

短い沈黙。次に発言したのは、司令官的な人物だった。

「先の大海戦でわれわれの存在は列強に知られてしまった。我々の力を知った列強は、我々の存続を許す代わりに建艦力を奪った。そして第零遊撃部隊は解散。関係者の大量処分など。だが、これでもかなりの譲歩を得られたよ。何しろ、陸軍国であるドイツはたいして激怒しなかったが、国力の弱い日本はものすごい抗議がきた。アメリカからも抗議が来たが日本ほどではなかった。最も激しく攻撃したのはイギリスだったよ。」

次に思想家らしき中年の知性的な男が嬉々とした顔で話す。

「4列強のなかでイギリスは海軍が無ければ、三流国だからな。本国防衛艦隊、植民地防衛艦隊ともにほぼ壊滅状態のイギリスは、ものすごいスピードで海軍の再建を始めたが、艦隊が完成する前に植民地失われることになるだろう。いや、そうしてみせる。最初ののろしは、最大の植民地インドだ。ここが陥落すれば、大英帝国の崩壊はかつてのナポレオン帝国の軌跡をたどるだろう。」

「だが、」と長が引き継ぐ。

「新たな超兵器を作ることはないだろう。なぜならば、コピーを作るよりオリジナルを発掘し、それを使用した方がよいからな。特に日本はシナ事変で膨大な軍事費を投入したため、新たな船を建造することはないだろう。陸軍国であるドイツも同様だ。この両国は、オリジナルを奪取すべく行動を開始しているとの報告もある。大英帝国は帝国の情報網を使い早くも研究チームを作り遺跡に派遣している。」

「遺跡は、そんなにあるのですか!!!」驚く私。信じられない。あのような世界を破滅させる力を持った戦艦が大量に埋もれていようとは。

心地よく、透き通った、非常に印象が残る声が答える。

「はい。すべの始まりはツングースにあります。1908年起きた爆発は、明らかに不自然でした。実地に潜入した結果、どうやら遺跡を発掘し、その力を使用したところ、使用方法を誤ったせいか大爆発を起こし、そこにいた軍人2千、民間人1万人は即死しています。ロシアはその後、ヨーロッパ戦争、革命と続いたため、このことは忘れ去れていたようです。レーニンは、自爆的な革命家で政権を奪取したはよいが、新国家を作成する能力は皆無で、後継のスターリンがいなければ10年で滅んでいたでしょう。」

「さて、問題は1920年代です。戦争に敗れ膨大な植民地を失い、陸軍10万に制限されたワイマール共和国(ドイツ)は、ソビエトと密約を結び、ソビエト領内で密かに訓練を続けていました。しかし、ある仕官が偶然からかツングースの真実を探り当て、その情報を故国に持ち帰りました。この情報は当時躍進中のドイツ国家社会主義労働党(ナチス)が信じ、ヒムラーが陣頭指揮をとって、ドイツ領内の遺跡を探りあてたそうです。ドイツのレムレースが最も早く完成した理由はここにあります。」

「ですが、不思議なことに、この情報はイギリス、アメリカ、日本の3カ国にしか伝わらなかったようです・・・」

前へ 次へ トップへ