背後から1

彼は今の待遇に非常に不満であった。
海軍兵学校の同期で、成績が彼より下位だった男の命令に従うこと。本来の世界であれば、その男が彼に命令を下すことはなかったであろう。だが、先にこの世界に迷い込み戦果を上げているという事実の前に、彼は従うざるを得なかった。どんな理不尽な命令にも・・・

多数の敵と戦うため、彼の艦の居住区が削られた。より多くの兵器を積むためだ。
司令艦を守るため、彼が指揮する従属艦は超音速魚雷の盾にされたことがあった。

あるときは燃料弾薬艦の艦長に転属させられたことがあった。あの男の要望によってだ。

戦場で功績を立てても彼が従属艦の艦長である限り評価されることは絶対にない。すべての功績はあの男のものになる。

・・・

彼がこの世界で成り上がるには、もうあの男を殺すしかなかった。
幸い戦場に転移されるとき、彼の指揮する艦は常に司令艦の背後にいる。彼は今度の戦いではレーザー戦艦を指揮することになっていた。常ならば味方にはあたらないように調節されているが、今度はその調節を狂わせて、司令艦を撃沈する。そう彼は心に決め、部下に相談した。
彼と同じように今の待遇に不満を持っていた部下から反対の声は無かった。
後は決行するのみ。

ふふふ

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